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治療戦略の一端を担う治療用アプリの可能性

水上 徹

リサ・リューション事業部
ソリューショングループ(Pharmaceuticals & Medical)
シニアアナリスト

2018年の(2回目の)入社当時から現在まで、医療用医薬品領域において、患者・ドクター調査および受託調査を担当。特に自己免疫疾患や精神神経疾患の調査に、数多く携わっている。

 Medical領域のリサーチ担当の水上と申します。このたび、日々業務で感じていることを、自由な視点(M’s EYE)でお届けしたいと思っております。

第3回は「治療戦略の一端を担う治療用アプリの可能性」です。
 

注目される治療用アプリとその展開領域

 近年、医療現場において新たな治療手段として、「治療用アプリ」が注目されています。
治療用アプリとは、医療機関から処方されるインターネットアプリを通じて、患者さんに対する行動変容を促し、疾患の改善を図る治療ツールであり、医療機器として薬事承認されるものです。
主に認知行動療法(CBT)や生活習慣改善に関する指示をアプリ経由で提供し、薬剤を使わずに、あるいは薬剤と併用して、症状の軽減・改善を目指す点が特長です。

現在、日本国内で薬事承認を受けている治療用アプリは、ニコチン依存症、高血圧症、アルコール依存症、不眠症、小児ADHDを適応とするものであり、生活習慣病や精神神経疾患を対象としています。
治療介入の方法との親和性が高いことから、今後もこうした領域を中心に開発が進むと予想されます。

治療用アプリの重要ポイント

 治療用アプリの活用においては、患者自身が自発的に取り組む姿勢(治療アドヒアランス)が極めて重要です。

薬剤治療においても、もちろん必要といえますが、治療用アプリでは、患者自身が毎日アプリを操作し、指示に従い、記録を行うといったより能動的な治療が求められるため、継続的な取り組みをサポートする設計が重要なポイントとなります。

また、治療アドヒアランスを維持するうえでは、治療効果が「見える」こと、「実感できる」ことも大きな要素です。

弊社が過去に実施したNASH(非アルコール性脂肪性肝炎)患者さんを対象とした調査においても、効果が見えにくく、実感しづらいという疾患特性などから、他疾患と比べて、治療アドヒアランスが低い傾向が見られました。

治療用アプリのメリット

 治療用アプリの最大のメリットは、非侵襲的であり、副作用リスクが極めて低いという点にあります。

十分な治療効果が実証され、かつ高いアドヒアランスが確保されれば、患者さんにとっても、医療従事者にとっても、理想的な治療手段となり得ます。

また、製薬企業にとっては、現状はデジタル領域との連携による開発が必要になるケースがほとんどですが、治療用アプリを展開することで、治療過程におけるリアルワールドデータを効率的に蓄積でき、今後の治療薬の開発などに活用できる点は、大きなメリットといえます。

治療戦略の一端を担う治療用アプリ

 さらに、比較的軽症な症例や、行動変容が治療の中心となる疾患に対して、治療用アプリの導入を進めることで、製薬企業などの市場全体の開発リソースを効率的に配分することができます。

すなわち、治療用アプリで対応可能な領域をカバーすることで、難治性疾患や重症例に、より開発リソースを集中させることが可能です。

今後の治療戦略では、多様な治療モダリティを最適に組み合わせることが重要ですが、治療用アプリについても、その有力な手段の一つとして、重要な役割を担っていくことが期待されます。

ありがとうございました。次回もぜひお読みいただけますと幸いです!

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