自己免疫疾患におけるCAR-T細胞療法への期待
2026.04.16

Medical領域のリサーチ担当の水上と申します。このたび、日々業務で感じていることを、自由な視点(M’s EYE)でお届けしたいと思っております。
第8回は「自己免疫疾患におけるCAR-T細胞療法への期待」です。
【血液がん領域で進展するCAR-T細胞療法】
CAR-T細胞療法は、患者さん自身のT細胞にキメラ抗原受容体(CAR)遺伝子を導入して作製したCAR-T細胞を用い、特定の抗原を持つ細胞を攻撃できるようにした細胞療法であり、主に血液がん領域で臨床応用が進んでいます。
国内でも現在、5製品のCAR-T細胞療法が使用可能となっています。
2019年に最初に発売された「キムリア」は、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫などを適応症としており、CD19を発現するB細胞を標的として強力に攻撃することで、従来の治療法では困難な再発・難治例などに対して、優れた効果をもたらす有望な治療法です。
【自己免疫疾患への応用と期待】
こうした背景のもと、CAR-T細胞療法は近年、自己免疫疾患領域への応用という観点からも注目されており、開発も進められています。
具体的には、SLE、全身性強皮症(SSc)、特発性炎症性筋疾患(IIMs)などの疾患です。
自己免疫疾患においては、自己抗体を産生するB細胞が病態に関連している疾患が多くみられます。
既存治療でも、B細胞を標的とした治療は存在しますが、これらの治療でも十分な効果が得られない難治例への治療として、CAR-T細胞療法が注目されています。
その背景には、CD19を標的とするCAR-T細胞療法では、B細胞系列を広く除去することで、病的な免疫応答そのものをリセットできる可能性があると考えられているからです。
【実用化に向けた課題と今後の開発】
一方で、自己免疫疾患でのCAR-T細胞療法の実用化には、大きな課題もあります。
CAR-T細胞療法では、サイトカイン放出症候群(CRS)や神経毒性といった副作用が知られており、安全性管理が重要となります。
また、患者さんごとに細胞を製造する個別化治療であることから、治療コストの高さや製造期間の長さなどといった面も、大きな課題といえます。
こうした課題への取り組みのひとつとして、他家細胞などを活用し、既製品としてストックする(オフ・ザ・シェルフ)CAR-T細胞療法の開発も進められており、治療コストの低減や製造期間の短縮などが期待されています。
難治例が多く、アンメットメディカルニーズの高い自己免疫疾患領域において、CAR-T細胞療法の実用化への期待とともに、新たな治療選択肢としてどのような位置づけを確立していくのか、今後の研究開発の動向が注目されます。

2018年の(2回目の)入社当時から現在まで、医療用医薬品領域において、患者・ドクター調査および受託調査を担当。特に自己免疫疾患や精神神経疾患の調査に、数多く携わっている。